9日、名古屋大で語られた物理学の最前線:小林・増川理論の限界とSuperKEKB/BelleⅡ実験による素粒子物理学の新たな展開

日本物理学会名古屋支部 が主催する「小林・益川理論では説明できない現象を探る〜いよいよ始まるSuperKEKB/BelleⅡ実験 〜」を
2017年12月9日に名古屋大学で聴講してきました。

小林・益川理論とは

小林・益川理論とは、1973年に京都大学の小林誠先生と益川敏英先生によって発表された理論で、クォークが3世代(6種類)以上存在し、クォークの質量項として世代間の混合を許すもっとも一般的なものを考えるならば、既にK中間子の崩壊の観測で確認されていたCP対称性の破れを理論的に説明できることを示したものです。

この理論は、当時は未発見だったチャームクォーク、ボトムクォーク、トップクォークの存在を予言しました。

その後、これらのクォークは実験で確認され、小林・益川理論の正しさが証明されました。2008年には、小林先生と益川先生にノーベル物理学賞が贈られました。

未解決の問題

しかし、小林・益川理論では説明できない現象もあります。例えば、宇宙初期には物質と反物質が同じ量だけ作られたと考えられていますが、現在の宇宙はほぼ物質だけで満たされています。

これは、物質と反物質とで物理法則が少しだけ異なっていることを示すCP対称性の破れによるものだと考えられていますが、小林・益川理論ではこの程度のCP対称性の破れでは反物質が消えてしまった理由を説明しきれません。

SuperKEKB/BelleⅡ実験

そこで、新しい物理法則やそれに伴う新しい粒子の発見を目指して、高エネルギー加速器研究機構(KEK)でSuperKEKB/BelleⅡ実験が行われています。

SuperKEKB加速器は、電子と陽電子を衝突させる加速器で、前身のKEKB加速器の40倍のルミノシティ(衝突頻度)を目指しています。BelleⅡ測定器は、その衝突点に設置された検出器で、B中間子やD中間子などの崩壊を精密に測定します。

これらのデータから、CP対称性の破れやレプトンフレーバー保存則の破れなど、標準模型を超える新しい現象を探索することが期待されます。

実験の進行

SuperKEKB/BelleⅡ実験は2019年3月に本格的な物理測定実験を開始しました。現在は、世界25の国と地域から約800人が参加する日本最大級の素粒子実験プロジェクトとして、データ収集と解析を進めています。今後の成果に注目ですね。

小林・益川理論 – Wikipedia

赤井和憲 KEK教授

  • 2008年度: 高エネルギー加速器研究機構, 加速器研究施設, 教授
  • 2005年度 – 2008年度: 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 加速器研究施設, 教授
  • 2006年度: 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 加速器研究施設, 助教授
  • 2004年度: 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 加速器研究施設, 助教授
  • 2000年度 – 2004年度: 高エネルギー加速器研究機構, 加速器研究施設, 助教授
  • 1998年度: 高エネルギー加速器研究機構, 加速器研究施設, 助教授
  • 1996年度: 高エネルギー物理学研究所, 加速器研究部, 助手
  • 1996年度: 高エネルギー物理学研究所, 加速器部, 助手  隠す

飯島徹 KEK教授 BelleⅡ実験 で切り開く素粒子物理学

名古屋大学 飯島徹 教授

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