国際人権法の専門家が語る日本の人権問題:藤田早苗氏名古屋学習会2023

藤田早苗著「武器としての国際人権」とセムラの画像

『武器としての国際人権』藤田早苗氏学習会2023

はじめに

日本は人権後進国だと言われることがありますが、それは本当でしょうか? 国際人権法の専門家である藤田早苗氏に、日本の貧困・報道・差別などの問題について、国連の人権機関がどのように見ているのか、また日本人がどうすべきなのかを講演を聞きました。

英国エセックス大学 人権センター フェロー 藤田早苗 法学博士(国際人権法)さんが登壇する勉強会に2月22日に参加しました。

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「武器としての国際人権」の著者で英国エセックス大学の人権センターでフェローとして活躍する藤田早苗法学博士(国際人権法)さんは、2月22日に名古屋のウィル愛知で開催された勉強会にゲストスピーカーとして招かれました。

藤田氏はエセックス大学人権センターフェローであり、国連の人権機関に日本の人権の問題を訴える活動をしています。

著書「武器としての国際人権」

彼女は最近、『武器としての国際人権 日本の貧困・報道・差別』(集英社新書)という本を出版しました。この本では、国際人権法の基準と日本の現状を比較し、日本が直面する人権課題を明らかにしています。

藤田早苗氏の著書「武器としての国際人権」は、日本の貧困、報道、差別について、国際人権基準との関連性を論じた内容となっています。

本書では、日本における人権侵害の実態を具体的な事例を挙げて説明し、国際人権基準との乖離を指摘しています². 例えば、貧困問題については、生活保護制度の不備や、非正規雇用の増加による格差の拡大などが挙げられています。

また、報道については、政府による情報操作や、マスコミの自主規制による報道の偏向が問題視されています。

さらに、入管収容所における人権侵害や、女性に対する差別問題についても取り上げられています。

本書は、日本における人権問題について知ることができるとともに、国際人権基準との関連性を理解することができる一冊です。

藤田氏によると、日本では「思いやり」や「お情け」に頼って人権を保障しようとする傾向があるといいます。しかし、これでは不十分であり、人権は誰もが要求できる権利であるということを理解しなければなりません。

参加者は、藤田さんの話に興味深く聞き入り、質疑応答では活発な意見交換が行われ、私も藤田さんに質問をしました。

藤田さんは、質問にも丁寧に答えて下さり、参加者との間で有意義な議論が生まれました。

勉強会は大盛況に終わり、藤田さんは参加者から感謝の言葉を受けました。

藤田氏は、これらの問題に対して無関心であってはならないと訴えます。私たちは自分自身や周囲の人々が人権侵害に遭わないように注意しなければなりません。

また、国際人権法の知識を身につけて、国連の人権機関を利用して、日本政府に対して変化を求めることができます。

藤田氏は、国際人権法を使うことで、日本の社会をより自由で平等で公正なものにすることが可能だと信じています。

『武器としての国際人権』

藤田早苗著「武器としての国際人権」とセムラの画像

私も藤田さんのサイン入りの本を買って読みました。藤田さんの本は、国際人権法について深く考えるきっかけを与えてくれる素晴らしい本です。

藤田早苗著「武器としての国際人権」とセムラの画像

英国エセックス大学人権センターのフェローである藤田早苗氏が著した「武器としての国際人権」は、国際人権法に関する法学博士の著作であり、人権問題についての考察が含まれています。この本には、国際人権とは何か、国際人権をどう使うか、国際人権から見た日本の問題などが含まれています。

藤田早苗とは?プロフィール

藤田早苗は、エセックス大学人権センターのフェローで、国際人権法の研究者である。彼女は大阪で生まれ育ち、名古屋大学で国際開発を学んだ後、イギリスのエセックス大学で国際人権法の修士と博士の学位を取得した。彼女は日本の人権状況について深く関心を持ち、弁護士やNGOなどと連携して、人権に関する教育や啓発を行っている。彼女は最近、集英社新書から「武器としての国際人権」という本を出版した。この本では、人権の基礎知識や歴史、日本や世界で起きている人権問題について、分かりやすく説明している。

名古屋・ウィル愛知

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【目次】

  • 第一部 国際人権とは何か
  • 第一章 人権とは?——「思いやり」と「人権」は別物だ 
  • 第二章 国際人権をどう使うか
  • 第二部 国際人権から見た日本の問題 
  • 第三章 最も深刻な人権侵害は貧困 
  • 第四章 発展・開発・経済活動と人権 
  • 第五章 情報・表現の自由 
  • 第六章 男性の問題でもある女性の権利
  • 第七章 なくならない入管収容の人権問題

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ポール・ハント(Paul Hunt)氏

ニュージーランド出身。英国ケンブリッジ大学法学部卒、同大学修士課程終了(学術修士)、ニュージーランド、ワイカト大学修士課程終了(法学修士)、北欧公衆衛生大学(Nordic School of Public Health)名誉博士号授与。現在、英国エセックス大学ロースクール教授。同大学人権センター所員。
 ヨーロッパ、中東、アフリカ、南太平洋地域における人権分野での活動に広く従事。ロンドンに拠点を置く人権NGOリバティのリーガルオフィサー、ガンビア共和国ブルンジにあるアフリカ民主主義・人権研究センターの副所長などを経て、1999年、国連社会権規約委員会委員に就任(〜2002年)。2000年には国連開発計画(UNDP)の報告書のアドバイザリーパネリストを勤める。その後、2002年から2008年8月まで、到達可能な最高水準の身体的及び精神的健康を享受する権利に関する初代国連特別報告者を6年間にわたって務めた。

■健康権に関する特別報告者としての活動
 特別報告者の任務遂行のため(1)基本的人権として到達可能な最高水準の身体及び精神の健康を享受する権利の輪郭を描き出し(2)同権利の内容を明確にすること、そして(3)同権利の実施運用方法を明らかにすることを目的とし、同権利の側面から、HIV/AIDS、医薬品へのアクセス、妊婦死亡率、精神保健、貧困削減政策、ミレニアム開発目標(MDGs)、世界貿易機構(WTO)などを研究。また、ウガンダ、ペルー、スウェーデン、インド、コロンビア、世界銀行、製薬会社などへの調査訪問を行う。

■主要著書
・The World Bank, IMF and Human Rights (Wolf Legal Publishers, Netherlands) 2003 (co-edited with Susan Matthews and Willem van Genugten).
・Culture, Rights and Cultural Rights: Perspectives from the South Pacific (Huia Publishers, NZ) 2000 (co-edited with Margaret Wilson.)
・Reclaiming Social Rights: International and Comparative Perspectives (Dartmouth Publishing Company, London) 1996.

■主要論文

  • “A Human Rights-Based Approach to Health Indicators” in Economic, Social and Cultural Rights in Action (Mashood Baderin and Robert McCorquodale, eds), OUP, 2007, 303-330. (with Gillian MacNaughton.)
  • “Mental Disability and the Human Right to the Highest Attainable Standard of Health”, Human Rights Quarterly 28 (2006), 332-356. (with Judith Mesquita.)
  • “The human right to the highest attainable standard of health: new opportunities and challenges”, Transactions of the Royal Society of Tropical Medicine and Hygiene, (2006) 100, 603-607.
  • “WTO member states and the right to health”, in Human Rights and Capitalism, Janet Dine and Andrew Fagan (eds), Edward Elgar Publishing, 2006, 228-253. (with Simon Walker.)
  • “A human rights-based approach to health indicators”, in Mashood Baderin and Robert McCorquodale (eds), Economic, Social and Cultural Rights in Action, OUP, 2006 (forthcoming, with Jillian MacNaughton.)
  • “Using all the tools at our disposal: poverty reduction and the right to the highest attainable standard of health”, Development Outreach, World Bank Institute, May 2006, 18-20.
  • “We the Peoples’, the Role of Non-Governmental Organisations in the UN Human Rights System”, New Zealand Law Journal, March 2006, 50-52.
  • ・“The UN Special Rapporteur on the Right to Health: Key Objectives, Themes and Interventions”, Health and Human Rights: An International Journal, Harvard School of Public Health, 2003, 1-27

人権理事会

 沿革


2005年9月の国連首脳会合において設立が基本合意され、2006年3月15日に国連総会で採択された「人権理事会」決議により、国連総会の下部機関としてジュネーブに設置されました。国連における人権の主流化の流れの中で、国連として人権問題への対処能力強化のため、従来の人権委員会に替えて新たに設置されたものです。

 理事会は47か国で構成され、その地域的配分は、アジア13、アフリカ13、ラテンアメリカ8、東欧6、西欧7です。総会で全加盟国の絶対過半数で直接かつ個別に選出され、任期は3年、連続二期を務めた直後の再選は不可となっています。また、総会の3分の2の多数により、重大な人権侵害を行った国の理事国資格を停止することができます。

 人権理事会は、2006年6月の第1回会合以来、1年の間に合計9回にのぼる理事会会合(5回の通常会合と4回の特別会合)や各種ワーキング・グループ会合等を開催し、テーマ別及び国別の人権状況にかかる報告や審議等のほか、特に、人権委員会から引き継いだ活動や組織の見直しを行いました。先進国と途上国との間での粘り強い協議の結果、2007年6月には、作業方法や組織等の制度構築にかかる包括的な合意がなされました。今回合意された制度の下で、人権理事会が世界の人権状況の改善に如何に取り組んでいけるかが今後一層重要となります。

制度構築の概要

II 主な任務

人権と基本的自由の保護・促進及びそのための加盟国への勧告
大規模かつ組織的な侵害を含む人権侵害状況への対処及び勧告
人権分野の協議・技術協力・人権教育等
人権分野の国際法の発展のための勧告
各国の人権状況の普遍的・定期的なレビュー(UPR)
総会への年次報告書の提出


III 日本の取組

日本は、世界の人権問題に対して、国連がより効果的に対処する能力を強化するとの観点から、人権理事会を巡る協議に積極的に参加しました。また、1982年以来一貫して人権委員会のメンバー国を務めているという経験を活かし、人権理事会においても、人権分野における国際貢献をより一層強化していく考えです(人権理事会ハイレベルセグメント(ジュネーブ))。

鈴木外務副大臣主催在京大使等を招いた「人権関連国際選挙当選祝賀レセプション」の開催(令和元年12月3日)
国連人権理事会理事国選挙の投票結果(令和元年10月18日)
2019年人権理事会理事国選挙における日本の自発的誓約(英語)(PDF)別ウィンドウで開く
2019年人権理事会理事国選挙用パンフレット(英語)(PDF)別ウィンドウで開く
国連人権理事会理事国選挙の投票結果(平成28年10月29日)
2016年人権理事会理事国選挙における日本の自発的誓約(PDF)別ウィンドウで開く
2016年人権理事会理事国選挙用パンフレット(英語)(PDF)別ウィンドウで開く

人権委員会と人権理事会の相違点

人権委員会と人権理事会の相違点
  人権委員会 人権理事会
会期 6週間(3~4月) 少なくとも年3回、合計10週間以上
(一年を通じて定期的に会合)
場所 国連欧州本部(ジュネーブ) 国連欧州本部(ジュネーブ)
ステータス 経済社会理事会の機能委員会
(1946年経済社会理事会決議により設立) 総会の下部機関
(2006年総会決議により設立)
理事国数 53か国 47か国
地域配分 アジア12、アフリカ15、ラテンアメリカ11、東欧5、西欧10 アジア13、アフリカ13、ラテンアメリカ8、東欧6、西欧7
選挙方法

人権理事会(Human Rights Council)

(www.ohchr.org/EN/HRBodies/HRC)は、人権と基本的自由の促進と擁護に責任を持つ国連の主要な政府間機関である。理事会は、60年間にわたって活動してきた「人権委員会(Commission on Human Rights)」に代わる機関として2006年に総会によって設置された。理事会は人権侵害に取り組み、それに対応する勧告を行う。理事会は人権の緊急事態に対処し、人権侵害を防止し、総合的な政策ガイダンスを提供し、新しい国際規範を発展させ、世界のいたるところで人権順守を監視し、加盟国が人権に関する義務を果たせるように支援する。また、国家(加盟国やオブザーバー国)や政府間組織、国内の人権機関、NGOが人権についての関心事項について発言できるようにする場を提供する。

人権理事会の47理事国は、総会が秘密投票によって直接かつ個々に選出する。総会の193票の過半数を得なければならない。任期は3年で再選は可能であるが、連続して2期以上は務めることができない。理事国は公平な地理的配分に基づいて選出される。アフリカ・グループとアジア・グループがそれぞれ13議席、ラテンアメリカとカリブ海域が8議席、西欧およびその他が7議席、東欧が6議席である。

理事会は年間を通じ定期的に開かれる。10週間以上の会期を年に最低3回は開催する。さらに、理事国の3分の1の支持を得た1理事国によって、特別会期をいつでも開催できる。2016年、2回の特別会期が開かれた。最初の会期は、シリアにおける人権状況の悪化、次会期は南スーダンにおける人権状況、に関するものであった。

理事会は必要に応じて広範にわたる専門家グループや作業部会の独立性や専門的知識を活用する。理事会は、人権侵害を調査するために調査委員会や事実調査団を設置する。また、加盟国を支援し、必要な改善を行い、かつ侵害を非難するために政府との対話を行う。その苦情申し立て手続きを通して、理事会は個人、グループまたはNGOによる重大かつ組織的な人権侵害の申し立てを取り上げる。手続きは、すべての国におけるあらゆる人権および基本的自由について苦情を受ける唯一の普遍的な手続きである。

人権理事会の作業は、また、人権理事会諮問委員会(Human Rights Council Advisory Committee)の支援を受ける。委員会は18人の専門家からなり、理事会のシンクタンクを務める。行方不明者、食糧への権利、ハンセン病に関連した差別、人権に関する教育と研修のような人権問題に関して専門知識と助言を理事会に提供する。その任務の実施に当たっては、国家、政府間機関、国内の人権機関、NGO、その他の市民社会の主体と互いに協力する。

普遍的・定期的レビュー(Universal Periodic Review)人権理事会のもっとも革新的な特徴は、「普遍的・定期的レビュー(UPR)」である。このユニークな制度には、国連の193全加盟国の人権記録を4年ごとに審査することが含まれる。レビューは、理事会の主催のもとに、共同の、政府主導のプロセスである。理事会は、各国が自国の人権状況を改善し、かつ国際の義務を果たすために採った措置および今後対処すべき課題についての報告書を提出する機会を提供する。レビューはすべての国に対する扱いの普遍性と平等を確保するためのものである。

参考文献・リンク

おわりに

このページでは、日本の人権問題について、藤田早苗氏の著書「武器としての国際人権」を参考にしながら、概観しました。日本は、貧困や報道や差別などの人権問題に直面しています。国際人権法は、人権を保護するための法律であり、人権を要求する権利です。国際人権法を武器として使うことで、日本の人権問題に対処することができます。国際人権機関に訴えること、国際人権法の普及と教育を行うこと、国際人権法の国内化と遵守をすることが、国際人権法を武器として使う方法です。日本の人権問題について考えるきっかけになれば幸いです。

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