「飢えるか、植えるか」鈴木宣弘 東京大学名誉教授・氏が語る、日本の食と命の瀬戸際

講演会のサイン会場で、東京大学名誉教授の鈴木宣弘氏(右)と、黒いコートを着た榊原平(左)が机を挟んで並んで笑顔で写っている写真。鈴木氏は縞模様のスーツに赤いネクタイを締め、眼鏡をかけている。男性は鈴木氏の著書『世界で最初に飢えるのは日本』のサインが入ったページをカメラに向けて開いて持っている。背景には「鈴木宣弘 サイン会」と書かれたホワイトボードが見える。

2026年2月11日、愛知県内の大ホールにて「食といのちとくらし」」と題されたこの講演が開催されました。記念講演に登壇されたのは、日本の農業経済学の第一人者であり、鋭い視点で食料安全保障の危機を訴え続ける東京大学名誉教授・鈴木宣弘(すずき のぶひろ)先生です。

この講演は、ユーモアを交えながらも、私たちが直面している「食べられない未来」への強い警鐘を鳴らすものでした。その衝撃的な内容を余すことなくお届けします。

冒頭:三重の真珠と「物の本質」を見極める目

講演の冒頭、鈴木先生は自身のルーツである三重県の話で会場を和ませました。

「もし伊勢志摩で100万円の真珠を買おうとしているなら、ちょっと待ってください。私に言えば30万円で用意できるかもしれませんよ(笑)」

この冗談には、単なる笑いだけでなく「ブランド料や中間マージンに惑わされず、物の本質を見極めてほしい」という先生の強いメッセージが込められていました。和やかな雰囲気から一転、先生の口から語られたのは、私たちの「食」と「命」がかつてない危機に瀕しているという深刻な現実でした。

1. 日本の食料安全保障はなぜ崩壊したのか?

政治の劣化と「石破プラン」への再評価

直近の政治動向を受け、鈴木先生は現在の農政が現場を無視した「机上の空論」に陥っていると厳しく批判されました。

「かつて石破氏が農水大臣時代に掲げた**『石破プラン』**。戸別所得補償によって増産を促し、価格が下がっても国が支えるという仕組みこそ、作る者への敬意がある農政の原点でした。しかし今はどうでしょう?」

「お米券」や、エネルギーが止まれば稼働しない「植物工場」への過度な期待。これらは本当の意味での安全保障にはなり得ないと断言します。

食料安全保障崩壊の「5つの本質」

スライドを使って解説された、日本の食が直面する5つの危機的実態は衝撃的なものでした。

  1. 米国の在庫処分場 余剰農産物を日本が押し付けられている実態。
  2. 「危ない食料」の最終処分場 EUで禁止された発がん性リスクのある成長ホルモン牛肉(エストロゲン等)が、二重基準で日本へ輸出されている。
  3. 市場原理主義による「洗脳」 「安いものを輸入すればいい」という誤った経済合理性の浸透。
  4. 農業を「生贄」にする政策 自動車産業などの利益のために農業を売り渡す構造。
  5. 財務省による「命のコストカット」 「今だけ、金だけ、自分だけ」の論理で農業予算が削られている。

特にフランスとの比較は顕著です。戦略的に農業を守るフランスの農家平均年齢は$51.4$歳であるのに対し、切り捨てを続けた日本は$69$歳。この差が、これまでの農政の失敗を物語っています。

2. 現場から迫る「命の危機」 種と肥料を握られる恐怖

肥料の「兵糧攻め」と種の主権

農業の根幹である「肥料」と「種」が他国や多国籍企業に握られている現状に、先生は強い危機感を表明されました。

  • 肥料の危機 ロシア・ベラルーシ等の情勢により供給が止まれば、日本の農業は即座に立ち行かなくなります。
  • 種の喪失 種子法廃止や自家採種禁止により、命の主権が多国籍企業へ。シャインマスカットの流出報道の裏で、より本質的な「種の主権喪失」が進んでいることに目を向けるべきだと説きます。

ミサイルより「田畑」を守るのが本当の国防

「もし海上封鎖されれば、日本人は数週間で干上がる。米国のシミュレーションでは、局地的な核戦争による物流停止で、餓死者の$3$割が日本人になるとされています。ミサイルを並べる前に、まず国民が食べるものを確保することこそが、真の国防ではないでしょうか」

また、「コメ不足」の正体についても言及。数十年前から需要に対して生産が追いついておらず、「コメ余り」は人為的に作られた嘘であると指摘。国連FAOの「HUNGER MAP(飢餓地図)」に、日本がすでに含まれているという屈辱的な現実を突きつけました。

3. 私たちが今、選ぶべき道

では、私たちはどうすればいいのでしょうか?鈴木先生は明確な処方箋を提示されました。

農業問題は「消費者自身の生存問題」

「安さ」の代償として農家を壊すことは、自分自身の「命の保険」を解約する行為と同じです。生産者・消費者・社会が共に潤う「三方よし」の精神を取り戻さなければなりません。

  • 食料安全保障推進法: 農業予算を「防衛予算」と位置づけ、国民を守るための投資を行う。
  • ローカルフード法と自治: 自治体独自の条例や、フランスのような「有機給食の義務化」によって、足元から食を変えていく。

結びに代えて 「飢えるか、植えるか」

講演の最後、鈴木先生は会場に集まった参加者にこう問いかけました。

「私たちは今、究極の選択を迫られています。他国に命を握られたまま『飢える』のか。それとも、自らの手で種をまき、命を『植える』のか。私は皆さんと共に『植える』道を選びたい」

編集後記 今日からできる「選ぶ」行動

鈴木先生のお話は、決して遠い国の話ではなく、私たちの食卓のすぐ隣にある危機でした。スーパーで手に取るもの、地元の農家さんを応援すること。小さな一歩が、日本の、そして私たちの命を支える大きな力になります。

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画像(alt属性用): [講演会のサイン会場で、東京大学名誉教授の鈴木宣弘氏(右)と、黒いコートを着た男性(左)が机を挟んで並んで笑顔で写っている写真。鈴木氏は縞模様のスーツに赤いネクタイを締め、眼鏡をかけている。男性は鈴木氏の著書『世界で最初に飢えるのは日本』のサインが入ったページをカメラに向けて開いて持っている。背景には「鈴木宣弘 サイン会」と書かれたホワイトボードが見える。]

講演会のサイン会場で、東京大学名誉教授の鈴木宣弘氏(右)と、黒いコートを着た榊原平(左)が机を挟んで並んで笑顔で写っている写真。鈴木氏は縞模様のスーツに赤いネクタイを締め、眼鏡をかけている。男性は鈴木氏の著書『世界で最初に飢えるのは日本』のサインが入ったページをカメラに向けて開いて持っている。背景には「鈴木宣弘 サイン会」と書かれたホワイトボードが見える。

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